本の概要
タイトル:『生まれが9割の世界をどう生きるか』
著者:安藤寿康さんの本。
専門は、教育心理学・行動遺伝学・進化教育学
著者いわく、前作の『日本人の9割が知らない遺伝の真実』というのはエビデンスなしのタイトルで御愛嬌だったが、今回の生まれが9割はハッタリではないと自信をもっておっしゃっておられます。いわゆる「生まれ」が人生のさまざまなテーマに対して、どう影響を与えているかを論じた興味深い1冊です。
遺伝がもたらす不平等な社会をいかに幸せに生きるか
子どもに親は選べない、どんな環境に生まれるかは運任せ。最近話題になっている「親ガチャ」という言葉があらわすのは、遺伝と環境要因がすべてを決めるので、努力することに意味はないと言った若者の諦念である。
確かに遺伝が、あらゆる要素に影響するのは事実である。しかし、遺伝についての最新の知見は常に更新されている。専門家ではない人間が過去の研究結果を軸に、あたかもそれが唯一の真理のように語るのは非常に危険である。
本書では、行動遺伝学の専門家が、一般読者の遺伝についての素朴な疑問に答えるとともに、遺伝における不平等を前提にしたうえで、「いかに自分らしく生きていくか」、「幸福に生きるのか」。そのための方法を論じていく。Amazonn.co.jp 紹介分より
興味深々ポイント
知能の高い親からは知能の高い子が生まれる!?
同じ両親からは、様々な子供が生まれます。ただ、知能や学力は、相加的遺伝(複数の遺伝子がともに存在するときには、平均効果は加算的に働く)の傾向が強くでます。それに加えて、平均への回帰という統計的な現象も子供の遺伝の影響してきます。
例えば、
遺伝率が95%の身長を例に当てはめてみると、両親が高身長の場合は生まれてくる子供も高身長になるのか!?さまざまな子供が生まれることを大前提にし、相加的遺伝、平均への回帰を説明すると、
相加的遺伝とは、両親の中間くらいになる確率が最も高くなること
平均への回帰とは、両親が高身長の場合は予想より低めになる傾向、そして両親が低身長の場合は予想よりも高めになる傾向
もし、親の遺伝がそのまま受け継がれるとするなら、高身長の両親から生まれた子供は世代を重ねるにつれて高く、低身長の両親から生まれた子供は身長が低くなってしまします。そうならないために、先祖返り現象とも呼ばれる平均への回帰というものが存在します。
身長の遺伝率は95%と高いため、相加的遺伝や平均への回帰というものが分かりやすいが、知能の遺伝率は51%のため、身長に比べると、さまざまなタイプの子が生まれるのではないかと予想されます。
親ガチャの影響はあるのか!?
2021年新語・流行語大賞とは、大衆の目・口・耳を賑わせた新語・流行語を選ぶものですが、ただ流行っただけではなく、世相を衝いた表現も評価の対象となる言葉に「親ガチャ」という言葉が選ばれました。
すず子としては、確かに使いたくはないけれど、全く関係ないとは断言できないと感じています。
この本では、親ガチャというのを3つに分けて考えています。
①虐待・ネグレクトなどきわめて深刻な家庭=呪いの親ガチャ
②これまでの人生は自分の責任ではなかったと知った時にでる=救いの親ガチャ
③冗談交じりに使われる=なんちゃて親ガチャ
◎呪いの親ガチャとは、人生における自由度が低いため、遺伝の影響よりも環境の影響が出やすい。つまり、制限された社会の中では、遺伝より環境が優先する。呪いの親ガチャの場合は、誰かの救いがなければならない最も深刻な状態であると言えます。
◎救いの親ガチャとは、豊かではない家庭に生まれ、苦労したけど何とか頑張っった人の苦しみを解消してくれる魔法の言葉になっています。
◎なんちゃって親ガチャとは、笑い話にできる程度の軽いレベルです。例えば、もっと美人だったらなぁ~、もっとお金持ちだったらなぁ~という程度です。
親ガチャ外れたら負け組なの?
自由になればなるほど遺伝の影響が大きく、環境の影響は小さくなるため、親ガチャに外れたからと言って、負け組確定ではありません。
中の下以上の家庭であれば経済状況はほとんど影響せず、遺伝的な素質の影響が大きくでます。
収入は、学校教育の影響は大きくなく、その子の遺伝的な素質によって将来の収入は大きく影響するため、いい学校を出たから、収入が高いというわけではありません。
この調査結果より、遺伝+その才能に対しての良い環境が得られたなら、一番花開くと考えます。運にも左右されるということです。
才能・訓練・教育が大事!!
先生ガチャの影響は!
能力の発現を先生や学校ばかりに期待するのはやめ、先生ガチャで能力の発現できないということはあまり心配しなくてもよいと述べられています。
知能が高い人の特徴とは!?
パーソナリティーの研究分野で主流になっているビックファイブ理論の中で、知的好奇心の広さに知能との相関があることが分かっています。
知能が高いから集中力があるのか!?
集中力とは、一般的な能力があるわけではなく、特定の課題に対してわき目もふらず持続的に取り組み続けざる得なくなっているときのこと指しているそうです。
つまり、知能が高いから集中力があるわけではないというわけです。
気になる遺伝率は!?
体重(15歳時) 92%
身長(15歳児) 95%
IQ(全体) 51%
IQ(児童期) 41%
IQ(青年期) 55%
IQ(成人期初期) 66%
国語(9歳) 67%
算数(9歳) 72%
理科(9歳) 63%
・親の遺伝に縛られる部分と努力するれば変えられる部分がある。
・自由度が高い世界だと遺伝が優位。
・制限された社会だと環境が優位。
・呪いの親ガチャでない限り、個人の力で乗り越えられることもある。
・先生ガチャは関係ない!!
・好奇心が高い=知能が高い。
・収入と学校教育は関係ない。
・中の下以上の家庭であれば経済状況はほとんど影響しない。
・遺伝率を参考に努力できることはある。
すず子のつぶやき
この他にも、習い事のことや、苦手なことへの対処法、才能を育てる方法、学歴社会をどう生きるかなど、深い話はあったのですが、すず子が気になったポイントだけ箇条書きにしてみました。
ただ、専門家が書いてある書籍のため、若干分かりづらいところもありましたが、熟読するたびに新しい発見や新しい解釈ができる本でした。
安藤先生がおっしゃっている収入と学校生活は関係ない、頭のいい人が進学校に行くだけで学校教育で頭がよくなっているわけではないということは同じなのではないかと感じました。なんか卵が先か、ニワトリが先か、みたいな話だなと思いながら読んでました。だから、収入の高さに学校教育は影響しないが、遺伝的要素は大きく影響するということに結論づけられるようです。
歳を重ねるごとにIQの遺伝が強く出てくるというのは何とも言い難い・・・。
少なくとも社会の変化が激しいので、いろんな経験をして、親を簡単に超えて欲しものでしす。
考えさせられました!!